古楽のこと

今週は古楽の合宿でした。

…と言っても私は日帰り聴講だけ。しかも1日だけ。

何せお金ないし、さらってないし。というダメダメな生徒です。

 

この合宿、数えてみたら4年目でした。

しかし、、、

本人的にはいつまでたっても大して習得できてない初心者同然で、「もう4年目!??」と、時間ばかりが経過してることに焦ります。

 

*古楽ってなんだ?という方のために、ざっくりと古楽について私なりの解釈で説明しておきます。。

現在一般的にクラシックというと、西洋発祥の芸術音楽(宗教曲などにルーツを持つ厳格な様式音楽や、そこから派生した交響曲やオペラなど)を指しますが、時代はバロック以前からクラシック(古典)、ロマン派、近・現代に至る音楽を全部ひっくるめて「クラシック」というようになっていると思います。

それに対して古楽は、時代を中世・ルネッサンス・バロック(1600年代まで?)に限定し、その時代に使われていた楽器で演奏するので響きや演奏法に違いが出てきます。また、記譜法も違っていたり、当時習慣だったために指示されていないことなどもわかってきています。

管楽器は現代(モダン)楽器に比べると、形など、見た目にだいぶ変化を遂げているのでわかりやすいのですが、弦楽器はパッと見た感じではどこが違うのかわかりにくいです。

というのも、弦楽器(ヴァイオリン族)は1500年代には今の形が既に完成形として広まり、その後見た目に変化が認められるのはネックの角度、指板の長さ、弓の形状くらい。チェロはエンドピンというスチール製の足がついたこと、ヴァイオリンやヴィオラは顎当てが付き、取り外しのできる肩当てを付けるか付けないかは個人による、ということくらいでしょうか。

あとはボディ内部の補強であるバス・バーの長さ、弦の材質(プレーンガット→スチールやナイロンの弦に)ぐらいしか変化は見られないのです。


 

 

まだ私が古楽に目覚めてすぐの頃、古楽は知れば知るほど奥深く、勉強すればするほど知りたいことが膨れ上がり、そこで知ったことを土台に普段のモダンの仕事場に行くと、新たな発見の多いこと多いこと!

それに、初めて自分の愛器に裸ガットを張った時の活き活きとした音色に狂喜して、すぐに虜になりました。

 

私は今回合宿にくる二週間ほど前に、久々に本格的な室内楽の場をもらっていました。

プログラムは、メインがブラームスの6重奏曲第1番、モーツアルトのアイネ・クライネ・ナハト・ムジーク、ボッケリーニの5重奏曲Op.11-5、その他ドヴォルザークの5重奏曲(1楽章のみ)などなど。

メンバーは数年前から一緒に弾かせてもらってきた仲間で、彼らは普通にオケをバックにソロを張れるような、第一線で活躍する演奏家です。

 

そう。これは完全にモダン・クラシックの世界。

 

その世界は私もずっと目指してきた世界なのに、現在、一歩古楽の世界に入った私にはいつの間にかとても苦しい場になっていました。

何が苦しいかというと、音の出し方、表現の仕方、音圧、響き、、、うーん、ほとんどすべてかな。

 

みんな演奏は素晴らしいのに、頭を抱えて外に出たくなるほど、みんなの音が私の耳にはキツい音に感じられました。

 

誤解のないように言っておきますが、私は今もこれからも、きっと機会さえもらえればクラシックの世界でありがたく仕事をしていきたいと思っています。

でもオケならばなんとかしのげるのに(迷惑はかけてるかもしれないけど)、この室内楽の場は想像以上に厳しい現場だったとリハで思い知り、どうしたものか悩みました。

 

まず、裸ガットを張っている私の楽器の音色が浮く。。。

皆の密度の濃い立派な音に対して、私の楽器の軽い音は迫力に欠ける。

 

そもそも楽器のセッティングが違うのだから無理もない話で、この場でこの楽器を持ってきてる私が間違いなのです。

でも私にはスティール弦に替えるという発想は全くありませんでした。(スティール弦に替えるのが一番の解決法だったはず…汗)

我が師匠の成田さんが同じセッティングでモダンクラシックでも弾いてるから、私はこのままでもいけるはずと思い込んでました。

師匠と私とに大きなウデの差があることに気がつかず…

 

その時、ちょうど古楽仲間になっている1人と仕事で会う機会がありました。

さっそくその子を捕まえて抱えてる悩みを話したところ、「まぁ、ウデにもよりますが…」

その出だしだけ訊いて私は悟りました。

そうだ。ウデでなんとかするのだ。頭を使って、どうしたらモダン楽器と対等にアンサンブルできるかを考えるのだ。

 

私はバカみたいにただ悩み、理解してもらえないなどと愚痴ばかり考えていたのです。

シンプルに音程を安定させて、埋もれないよう立ち上がりの良い明快な音にする。

埋もれそうになっても弓の圧力でコントロールしようとしない。

 

どんなに言い聞かせても、焦ると結局は音を潰すようなボウイングをしてしまってた気もしますが。

 

その古楽仲間の子に相談しなかったら、私はこの現場でずっと頭を抱え耳を塞ぎ、独りウジウジしていただろうと思います。

本当に私にとってはありがたい存在で、これからも切磋琢磨していきたいと心から思う出来事でした。

 

そして、今までは考えなかったけど、改めて楽器を古楽器用とモダン用とに分けようかと思い始めました。

私が普段使ってる愛器はもともと古いもので優に300年を超えています。

この楽器が好きすぎて他の楽器を弾くことが出来ずにいましたが、家にはもう一本楽器があります。

 

10年くらい前に出来上がったオーダメイドのダ・サロ モデルの楽器。

少しハコが大きくて肩も張っていて、ハイポジションは私の指では届かないのですが。。。

ハコが大きい分、響かせれば太い音がしそうですが、今はまだ調整が必要な状態です。

この楽器をもっともっと弾き込んで、普段のオケの仕事に使うようにすれば、ガットを張っている楽器に無理な音を要求しないで済みます。

楽器が変われば気分も変わり、精神的にも健全になれそうな気がします。

 

そう思って、最近は毎日この楽器を鳴らす習慣をつけています。

音を育てるのが楽しくなるように。。。

でも顎あてが鬱陶しくて取ってしまったけど…ははは。

 

それに、スチールだからと言って力任せに弾かないように気をつけなければ。

せっかくアレクで整え、ガットで自然な加減で弓を使うようになったのに、逆戻りしては意味ナシ!

 

と言い聞かせつつ、明日もまた励みたいと思います。